南スーダン通信 A Letter from the Ambassador of Japan to South Sudan
14回 「南スーダンの皆様への感謝と平和と開発への期待」
今日が,私の駐南スーダン大使としての最後の日です。南スーダンを離任するに当たり,これまで数えきれないほど多くの機会にご助力いただいた全国の南スーダンの人達に深く感謝申し上げます。
任期中,南スーダンは引き続き厳しい状況にありました。しかし,私はこの課題が多い環境下にあっても,この国が多くの進歩を成し遂げたことに注目し,強調したいと思います。
先月以来,私はジュバ以外の3都市,具体的にはワウ,ベンティウ,ミンカマンを訪問しました。この国は環境や文化が多様なので,首都とは異なる場所を訪問すると,いつも新たな発見がありました。また,地方に行くと,人々がそれぞれの場所でどのような生活を送っているのか,何を楽しみ,何に苦労し,そして何を欲しているのかを知り,理解を深めることができました。
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ワウPoC地区の子供たちと | ワウの産科保健診療所 |
ワウでは,文民保護(PoC)地区を訪問しました。日本は同地区で,UNFPAと連携して産科保健診療所を,またIOMと連携してキャンプ運営・居住施設・生活物資などを支援しています。避難生活に負けず,好奇心旺盛で目を輝かせた笑顔の子供たちに囲まれました。私たちは皆,彼らの将来のために頑張っています。UNMISSと政府の治安機関が治安改善のために現場で連携することで,国内避難民が徐々に帰還しているとの説明を聞いて,嬉しく思いました。
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ベンティウの住民諸団体代表 写真提供:IOM/McLaughlin 2017 | ベンティウの居住施設内 |
ベンティウでは,UNMISS現地事務所を統括する平原弘子所長,そしてIOMとUNICEF関係者の案内を受けました。PoC地区の住民諸団体代表から話を聞いたところ,最大のメッセージは一刻も早い平和実現の必要性でした。同地区の国内避難民数は約11万5千人で,その多くは2013年12月の衝突発生時から同地区で避難生活を送っているからです。現在,政府とUNMISS,IOM,UNICEF等の連携で「ベンティウを超えて」イニシアティブが進められ,避難前のコミュニティで安全と基本サービスを提供することで帰還を促進していることを知り,心強く感じました。
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ミンカマンの女性研修センター | ミンカマンで野菜栽培を行う女性団体 |
ミンカマンへの訪問は,これまで日本が同地で幅広く支援事業を実施してきたので,今回の日・UN Women連携支援による女性研修センターの開所式出席が5回目となりました。東レイクス州知事,ジェンダー省次官も出席されていました。現地の女性団体のロダ代表は,同地の郡長の全面的な協力を得て,土地の確保をはじめセンター実現に尽力してきました。私は,今回歌と踊りで歓迎してくれた大勢の女性たちが,今後職業訓練による生計向上やジェンダー関連教育の恩恵を得られるよう願っています。
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歓送セミナーでの講演 | キール大統領への離任挨拶 |
南スーダンから離任するに際して,現地シンクタンクのエボニー戦略研究センターとスッド研究所,ジュバ大学が企画した2つの歓送セミナーで,「南スーダンの平和と開発を支援する:日本の視点」と「日本の開発経験と南スーダンへの教訓:私見」と題する講演を行いました。この機会は本当にありがたく,南スーダン政府と国民に伝えたいメッセージを全て両講演の中に盛り込みました。シンプルながら最も重要なメッセージは,「南スーダンの持続可能な平和は,南スーダン人自身の自主性と決意を涵養するとともに,国際社会の協力と支援を確保することで,初めて実現できる」というものです。当地ジュバ・モニター紙が,両講演の全文を紙面に掲載いただいたことを嬉しく思います。キール大統領にも,離任挨拶の際に両講演を手交し,内容を説明させていただきました。
JICAの主要インフラ事業の再開について,多くの方々から要望や質問を受けました。これに対しては,先月末,内閣府・外務省・JICAのハイレベル関係者が,昨年7月の衝突以来初めてジュバに来訪し,キール大統領への表敬や事業現場の視察を行ったところであり,これを第一歩に,南スーダン政府と国民の努力によりジュバ及び全国の治安状況が改善し,事業関係者のための追加的安全対策が適切に手当てされることで,本件が更に進展することを望んでいる旨答えています。
私の南スーダンでの経験は素晴らしいものでした。南スーダン国民から多大なる厚意をいただいたことは決して忘れません。最後に,南スーダンの全ての皆さんへの感謝の気持ち,そして平和と開発の実現への期待をお伝えしたいと思います。これからも,私の気持ちは常に,南スーダンの全ての皆さんとともにあります。