南スーダン通信 A Letter from the Ambassador of Japan to South Sudan

平成27年7月31日

第5回 南スーダン独立4周年に立ち会って考えたこと

 7月9日,南スーダンは独立4周年を迎えました。盛大な式典に向けて準備が進められる中,日本を代表して祝意を伝えるために,日本と南スーダンの関係を改めて振り返り,今後の更なる発展に向けてのメッセージを起草しました。そして,独立記念日に先立つ7月7日に,キール大統領とベンジャミン外務国際協力大臣に手交し,対外発表を行いました。
このメッセージは,70年前に焦土と化した日本が,平和愛好国としての歩みを進め,今日の平和と繁栄を達成した経験を踏まえて,南スーダンが国内の立場の違いを乗り越え,全ての関係者と協力し,国際社会と協調して,一刻も早く平和を達成することへの期待を表明しています。そして,困難な時も,日本は常に南スーダンの人達とともに,平和と繁栄を築き上げていくとの決意を新たにしています。
(祝賀メッセージ全文は以下でご覧になれます。)
https://www.ss.emb-japan.go.jp/en/release_20150707.pdf PDF

キール大統領へのメッセージ手交
キール大統領へのメッセージ手交
ベンジャミン外務国際協力大臣へのメッセージ手交
ベンジャミン外務国際協力大臣へのメッセージ手交

 7月9日当日には,市内中心部の自由広場で開催された独立4周年記念式典に,日本を代表して臨席させていただきました。ムセベニ・ウガンダ大統領をはじめ,アフリカを中心に諸外国から多数の閣僚が出席していました。キリスト教大司教からは,南スーダンが直面する現在の危機について,自らの責任を表明する発言があり,感銘を受けました。大統領からは,平和実現の決意が表明されました。それが一刻も早く実現するよう,心より願っています。

独立記念式典
独立記念式典
独立記念午餐会
独立記念午餐会

 その後も,独立記念日を祝して,様々な文化行事が開催されました。私は,7月11日の独立記念日ハーフマラソンに参加しました。テーマは,「平和と寛容のために走れ!」。とはいえ,成人男子は12キロのみで,1時間余りで楽しく快走し,表彰式にも参列しました。南スーダン陸上競技連盟事務局長ほか多くの方にもお会いして,2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて,スポーツを通じた平和構築支援を紹介させていただいたことも収穫でした。

ゴールイン!
ゴールイン!
上位入賞者への授賞式(あるいは新聞1面記事(7月13日付?))
上位入賞者への授賞式(あるいは新聞1面記事
(7月13日付?))

 翌週には,外交団のための大統領主催夕食会,そして幅広い関係者のための副大統領主催夕食会が開催されました。席上,南スーダン要人から,和解の進展と平和の実現に向けての決意が相次いで表明されているのが印象的でした。
 しかし,このような華やかな行事が開催されている間にも,厳しい状況は続いています。7月15日,JICAが支援したジュバ看護助産学校を視察した際,北部の紛争地域マラカルから退避してきた上ナイル大学の学生が,間借りをして授業を受けていることを知りました。7月17日には国連ハウスに隣接する文民保護地区でIOMによるコレラ予防接種投与を視察しましたが,この地区では数万人の人たちが,厳しい環境の中での生活を余儀なくされています。南スーダン全体では,国内避難民が160万人,国外への難民が60万人発生し,今も紛争は継続しています。独立4周年を迎えるに際して,このような人達への共感と連帯こそ,決して忘れてはならないと考えています。

ジュバ看護助産学校で授業中の上ナイル大学学生
ジュバ看護助産学校で授業中の上ナイル大学学生
文民保護地区でのIOMによるコレラ予防接種投与
文民保護地区でのIOMによるコレラ予防接種投与

 これから1年後,南スーダンが独立5周年を迎える時には,平和のもとで新たな一歩を踏み出すことができるよう,南スーダンの人たちとともに,努力を倍加していく所存です。今,遠い日本が平和を享受していることに思いを馳せつつ,この地でその恩を少しでも返していきたいと思います。