南スーダン通信 A Letter from the Ambassador of Japan to South Sudan
第6回 日本と南スーダンを結ぶ赤十字
本年3月,日本で「風に立つライオン」という映画が公開されました。
これは,ケニア北部の赤十字外科病院を舞台に,南スーダンの内戦に巻き込まれた少年兵を治療する日本人医師と看護師の様子を描いたものです。しかし,赤十字を通じた日本と南スーダンの関わりは,決して映画の世界だけにとどまりません。
南スーダンでは,紛争被害者の救済や予防のために,赤十字国際委員会(ICRC)や南スーダン赤十字社(South Sudan Red Cross Society)が大きな役割を果たしています。その活動を,日本も様々な形で支援し,交流を進めています。今回,ICRC南スーダン事務所のラウヘンシュタイン所長,佐藤真央レイク州フィールド要員にご同行いただき,先週ジュバ市での赤十字の活動を視察させていただきました。
ジュバ身体障害者リハビリセンターは,2006年にICRCが開設し,2009年に南スーダン政府社会福祉省に移管されました。紛争で足を失ったり病気で障害を持っていたりする人々のために,義足を製作し車椅子を提供・修理する国内唯一のリハビリ訓練施設として,なくてはならない役割を果たしています。センターの職員は皆生き生きと仕事に取り組んでおり,来訪した障害者は感謝のことばを述べていました。職員の一人は自らが障害者でありながら,食堂のシェフとして活躍するのみならず,障害者が自立できるよう裁縫を教えており,同じ境遇の施設利用者のために今後更に活動を広げたいと抱負を語っていました。
![]() 義足製造の様子 |
![]() 食堂のシェフ兼裁縫の教官からプレゼント寄贈 |
文民保護地区(POCサイト)では,ICRCと南スーダン赤十字社が協力して,紛争で離ればなれになった家族の再会のための様々な活動を行っていました。家族とはぐれてしまった国内避難民や難民を登録して顔写真を冊子にすることで捜索を可能にする「スナップショット」が,POCサイトや国外難民キャンプに配布されていて,ちょうど視察中には,遠くエチオピアはガンベラ難民キャンプでの避難生活中にジュバに妹がいることを突き止めた方から,メッセージと電話番号が届くという場に居合わせる幸運に恵まれました。ICRCの持つ離散家族再会支援の手法は,4年前東日本大震災で多くの人が家族の行方を失った際にも日本赤十字社に提供されたとのことで,他人事ではない,身に沁みて大切な支援だと感じました。
|
|
日本は本年3月,南スーダンに対する人道支援の一環として,ICRCの諸活動に425万ドルを拠出しました。これは,上記のリハビリセンターや家族再会活動のみならず,情勢が不安定な地域で戦火の影響を受けたコミュニティに対して医療や水を供給,あるいは食糧支援をするなどの幅広い活動に活用されています。また,ICRCでは日本人の佐藤職員がレイク州に常駐している他,赤十字の移動外科チームには日本赤十字社から医師と看護師が派遣されています。
http://www.jrc.or.jp/activity/international/news/150327_003470.html

|
|
佐藤職員によれば,ICRCの日本人職員は,過去3年で9人から27人と約3倍に増えたそうです。南スーダンのような困難に直面する国のために,日本人が更に活躍することを期待しています。そのような貢献は,世界から大いに歓迎されるに違いありません。