南スーダン通信 A Letter from the Ambassador of Japan to South Sudan
第7回 平和国家としての日本と南スーダン
8月26日にジュバのフリーダムホールで,南スーダンの紛争解決合意のキール大統領による署名式が行われ,日本の代表として臨席させていただきました。日本は全当事者による署名を歓迎し,政府間開発機構(IGAD)をはじめ調停に当たった関係国・機関の努力を高く評価しています(外務報道官談話はこちら)。これからは,国際社会の支援のもと,南スーダンの全ての当事者がこの合意を実施することを通じて,この国に一刻も早く平和と繁栄を実現することが重要です。そのために,私もそのために最大限努力する考えです。
![]() フリーダムホールでの署名式 ©UN Photo/Isaac Gideon |
![]() 合意文書 |
南スーダンが紛争解決に向けて新たな歩みを始めた今月,日本は戦後70周年を迎えました。この大切な機会に,日本の内閣総理大臣は,歴史の教訓を深く胸に刻み,より良い未来を切り開き,世界の平和と繁栄に力を尽くす決意を表明する談話を発表しています(安部内閣総理大臣の談話全文はこちら)。これは,日本の南スーダンへの政策にも深く関わる内容と思いますので,本通信で紹介させていただきます。
この談話では,日本が,近代化を進める中で,戦争の違法化という新たな国際社会の潮流,世界の大勢を見失い,「新しい秩序」の「挑戦者」となって戦争への道を歩み,70年前に敗戦に至ったことを振り返っています。そして,何の罪もない人々に,計り知れない損害と苦痛を,我が国が与えた事実を想起し,先の大戦への深い悔悟の念と共に,不戦の誓いを堅持し,平和国家として歩んできた不動の方針を確認しています。
![]() 安倍総理記者会見 |
![]() 全国戦没者追悼式 |
そして,歴史の教訓を深く胸に刻み,より良い未来を切り拓くために,以下の4つの決意を表明しています。これは,今の日本の南スーダンへの政策と,まさに軌を一にするものです。
第一に,自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去を教訓に,いかなる紛争も,平和的・外交的に解決することです。
今回,南スーダンの全当事者は,お互いの立場の違いを乗り越えて,平和を実現するために合意に署名しました。日本も南スーダンも,力による打開の試みが,多くの人達に取り返しのつかない惨禍をもたらすということを,十二分に認識しています。この合意の実施に向けて,日本は平和国家として,南スーダンの関係当事者と強い決意を共有して支援を継続する考えです。
第二に,戦時下,多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を教訓に,女性の人権が傷つけられない21世紀にするため世界をリードすることです。
日本は,南スーダンの紛争のもとで苦しむ女性のために,JICAやUNFPA,UNICEF,UNDP,UNWOMENなどを通じて,看護師助産師学校,産科診療所,警察の特別保護ユニット,職業訓練所などを支援しています,国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の女性ユニット長も,ユニセフの女性保護担当官も,日本人です。
![]() |
JICA・UNFPAを通じて支援しているジュバ看護・助産学校 |
![]() |
UNDPを通じて支援している職業訓練校 |
第三に,経済のブロック化が紛争の芽を育てた過去を教訓に,途上国支援を強化し,平和の礎となる繁栄を実現し,暴力の温床ともなる貧困に立ち向かうことです。
日本は,南スーダンが経済開発を通じて確固たる平和を実現できるよう,橋や水供給,河川港などのインフラ整備を支援するとともに,石油を補完する最大の代替産業である農業のマスタープランへの技術協力を行っています。
第四に,国際社会への挑戦者となってしまった過去を教訓に,「積極的平和主義」の旗を高く掲げ,世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献することです。
日本は,国際社会の一員として平和に貢献すべく,UNMISSに自衛隊施設隊約350名を派遣しています。この施設隊は,UNMISSの任務を支えるのみならず,その他の国際機関や南スーダンの人々に役立つ活動も行っています。
![]() ナイル架橋の工事現場 |
![]() 自衛隊施設隊による道路整備 |
日本も南スーダンも,戦争の惨禍を経験し,平和を希求する気持ちを一にしています。70年前の日本のように,南スーダンが国際社会と協調して,平和と繁栄の道を着実に歩んでいくことを心より願っています。