南スーダン通信 A Letter from the Ambassador of Japan to South Sudan

平成28年6月20日

第11回 国民統一暫定政府への日本の支援

本年4月29日は,南スーダンにとって歴史的な日でした。国民統一暫定政府が設立され,これまで対立していた諸派が一つの政府に入って,平和の実現に向けて大きく進展したからです。南スーダン国民も広く国際社会も,この日を長らく待ち望んでいました。日本政府もこれを歓迎する談話を発表しました。5月末からは,キール大統領,マシャール第一副大統領,イッガ副大統領による会談も始まり,新首脳陣は,対立の克服と平和の定着への歩みを共に進めています。

 
 
国民統一暫定政府の閣僚©UNMISS 平和達成のため対立克服を誓う首脳陣©UNMISS
国民統一暫定政府の閣僚©UNMISS 平和達成のため対立克服を誓う首脳陣©UNMISS
 

その中で,5月26日に日本にとって喜ばしいことがありました,本年,ジュバ大学は,「日本政府と国民による対南スーダン開発・人道支援の戦略的アプローチを評価」して,日本大使への名誉博士号の授与を決定しました。名誉学長である大統領の代理として卒業式に出席したイッガ副大統領は,私に名誉博士号を授与し,南スーダン国民に対する日本の諸分野での継続的支援に対する謝意を表明しました。

 
 
イッガ副大統領による名誉博士号授与 ジュバ大学の卒業生達
イッガ副大統領による名誉博士号授与 ジュバ大学の卒業生達
 

もちろん,日本の支援は南スーダンに対する国際社会からの支援のごく一部に過ぎません。南スーダン衝突解決合意の支援国・機関をはじめ,国内外の様々なパートナーの支援があってこそ,初めて日本の支援が効果を上げ評価されたのです。しかし,今回ジュバ大学から日本に名誉博士号が授与されたことは,日本の支援が南スーダン国民の心の琴線に触れたことを示すものです。私は,南スーダンの国民に対して,そしてこれまで南スーダンに対して長年支援を継続してきた日本人に対して,心からの感謝を伝えたいと思います。

 
 
JICAのジュバ水供給プロジェクト UNOPS連携のミンカマン河川港完工式
JICAのジュバ水供給プロジェクト UNOPS連携のミンカマン河川港完工式
 

日本の支援の根本には,日本自身が深く認識している戦後復興の諸課題に対する配慮があります。南スーダンが,包括和平合意から独立,和解プロセスに至る時期を通じて,日本は南スーダンの人道支援からの卒業を促し,経済開発に資する基礎インフラを整備し,責任を担う人達への技術と知識の伝授することで,南スーダンの自立を一貫して支援してきたのです。

 
 
UNDP連携の警察研修所での研修 UNITAR広島の戦後復興研修
UNDP連携の警察研修所での研修 UNITAR広島の戦後復興研修
 

国民統一暫定政府は,政治,治安,経済,人道上の大きな課題に同時に取り組むべき時期に立ち上がりました。日本は,その自助努力をどうすれば最大限に支援できるかを考えています。開発に不可欠な治安改善のための警察支援を継続しつつ,国際社会とともに停戦監視の強化と公共財政管理の改革に貢献しています。しかし,このような外部からの支援が効果を上げるためには,南スーダン自身が課題解決に向けて指導力を発揮することが不可欠です。国民統一暫定政府の賢明な決断と行動があってこそ,日本の南スーダンに対する更なる支援が可能となるのです。

南スーダンは,間もなく独立5周年を迎えます。日本には,「雨降って地固まる」ということわざがあります。南スーダンも,独立後のさまざまな困難を経て,自らの努力で和解と統合の基盤を確固たるものとし,新たな発展に向かうことを願ってやみません。